Wetsuits Upcycling Projectの発起人、スタイリスト水嶋和恵にインタビュー「ファッションが好きだからこそ伝えたい、環境のこと」

HONEY Vol.33では、役目を終えて廃棄になるウェットスーツをアップサイクルするという素晴らしいプロジェクトを紹介した。レジェンドサーファーのカシア・ミドーのウェットスーツを、ブランドディレクターのパスカル・マリエ・デマレが愛犬用バッグに作り替えたストーリーだ。詳細はこちら。このプロジェクトの発起人はHONEYで活躍するスタイリストの水嶋和恵。日本とカリフォルニアを行き来しながらビーチライフを楽しみ、サステイナブルファッションについて日々想いを巡らせている彼女にインタビュー。ファッション業界の最先端にいる彼女が見る、業界の流れとは。

Q.プロジェクト立ち上げのきっかけを教えてください。
ーHONEYの読者に、何か伝えられることはないかなと思っていて……。読者の方たちに発信することで繋がりたい。リードしなければ。何か私にできるサステイナブルなプロジェクトはないかと思ったのがきっかけです。パンデミックの影響でダークな空気が蔓延してるなかで、ポジティブなバイブスを届けたかったんです。そんなとき、マリエちゃんから「着られなくなったウェットスーツをアップサイクルできる」という話を聞いて、このプロジェクトが始動することになりました。

Q.スタイリストという職業の枠を超えた取り組みですね。
ー私にとってこれはスタイリストの延長と思っていて。プロフェッショナルな仕事って、ある程度年数を重ねていくと、枠が広がっていくんですよね。自分の基盤ができたら、次はこれまで得てきたものを人に伝えていくべきだと思うんです。地球温暖化の要因であるCO2やゴミ問題のひとつに、洋服の生産や廃棄が挙げられています。私はスタイリストでファッションに関わっているから、このキャリアを活かして何かできないかと思ったんです。

Q.リアルなファッションシーンの中では、環境問題はどう捉えられているんでしょうか。
ー数年前まではサステイナブルなブランドを探すのが大変でした。すでにマリエちゃんは取り組んでいましたが。でも今では、多くのブランドがサステイナビリティを実践しているし、全体の意識が高くなったと思っています。進歩しているという感覚は確実にありますね。古着屋さんやリサイクルの考えもまた盛り上がってきています。

Q.それでもファッション業界とサステイナビリティは、まだ対局な部分もあるかと思うんですが、矛盾や葛藤を感じることもありませんか?
ー最初は葛藤がありました。でも、いま住んでいるカリフォルニアの街はビーチからウエストハリウッド、メルローズ、ダウンタウンなど仕事場まで30分圏内で、海と山が近くて、大自然とエンターテインメント、ファッションが共存しているとても良い環境です。世界的にもその(自然と都会の)距離感がかなり縮まっているように感じるんです。ハイファッションブランドがこぞってサステイナビリティを実践し、ショーのステージのセットまで細かく配慮されています。私も業界にいて、気持ちが楽になってきました。

Q.そんな中で改めて今回の2人とのプロジェクト、いかがでしたか?
ーマリエちゃんは探究心、そして人との繋がり方がすごい。一般的なデザイナーの枠を超えてるんです。カシアもまた、リトリートを行ったりして、いちサーファーという枠を超えて地球に良いことをしようとしている。私もスタイリストの枠を超えてこうやって発信することができている。マリエちゃんもカシアも大好きな人なので、そんな2人とクリエイトできるのはとても嬉しいことです。すばらしい経験でした。イメージ以上のものが出来上がったと思っています。

Q.このプロジェクトを通じて、感じてほしいことは?
ー大切なのは、同じバイブスを持った人たちと一緒にクリエイトすること。地球に恩返しをするという想いをかたちにするのが重要だと思っています。壮大なテーマじゃなくても、身近なものでもなんでもよくて。ひとりの力でできることは限られているけど、手と手を合わせられる仲間がいて、それを発信できる場所もたくさんあるので。ぜひみなさんにもそういう気持ちになってもらえたらと思っています。

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