美ら海を脅かす、時代遅れの乱開発|地球の今、海の今を知る Vol.63

地球危機が声高に叫ばれるようになった近年に、沖縄の島々ではまるでバブル期かのように、「リゾート開発という名の環境破壊」が加速していることを知っていますか? 前回Vol.62で、すでに地球の限界を大幅に超えた5分野のうち、「Land-system Change(土地利用の変化)」についてはサラッと流して終わりましたが、それは今回、沖縄の今とともに改めて見つめ直したかったから。ちなみに「土地利用」とは、開発などによる地理的な自然破壊はもちろん、野生生物の生息地破壊、生態系の崩壊、地域の人々に降りかかる被害も含めた、幅広い悪影響を意味するカテゴリーのこと。

沖縄本島ではすでに何十年も前から開発が進み、美ら海もかつての麗しさをずいぶんと失ってしまいましたが、そんな過去に学ぶことなく、今は石垣島や宮古島、竹富島や西表島といった離島にまでますます利益至上主義の手が伸び、目に余る乱開発が急速に進んでいます。そのうちの一つ、石垣島では大規模ゴルフリゾートの開発計画が進行中で、自然環境と生態系の破壊、汚染による農地や漁場への悪影響、動物たちや島民の暮らしを脅かすダメージの大きさから、現在、市民や環境団体が建設中止を求めて働きかけているところ。このゴルフリゾートは石垣島の南西、前勢岳の豊かな山林を東京ドーム27個分も切り崩して建設される予定ですが、この辺りはもともと、息をのむほど美しい星空観察やヤエヤマホタルの鑑賞地として知られ、国の特別天然記念物カンムリワシも豊かに命をつなぐ営巣地。下流域には八重山ならではの生物相を力強く支える名蔵湾とサンゴ礁群が広がり、干潟とマングローブ林を擁する「名蔵アンパル」はラムサール条約にも登録されている湿地。石垣固有のイシガキパイヌキバラヨシノボリやヤエヤマセマルハコガメといった絶滅危惧種も多数生息し、世界的にも貴重な生態系が豊かに巡る自然環境でもあります。

どこのリゾート開発でも心ない自然破壊、水環境や土壌の汚染、生態系のダメージは共通していますが、ゴルフ場はとくに敷地が広大で、不自然に整えられた芝生や景観を維持・管理するためには農薬や化学肥料、除草剤や殺虫剤が継続的に使われ、土壌の劣化、地下水や周辺の川・海の汚染、下流域の生態系やサンゴ礁にも悪影響は波及します。コースの管理には大量の水も必要で、前勢岳のゴルフリゾートを実際に運営するとなると1日約1,000トンもの水を利用し、その多くは地下水でまかなう計画なのだそう。1日に約1,000トンとは、日本人の高水準な暮らしでも3,000人以上/日の生活用水を支えられるほど膨大な水量。とりわけ島の暮らしにとって水はとても貴重なもの、それを1リゾートがこれほど大量に独占して汲み上げ、夜には煌々と照明が灯され、その光害だけでもホタルをはじめ多くの生き物たちがどんどんと姿を消し、見える星々の数も減っていく……そんな悲しい未来予想図に反対する声は強く、こんな本音が多く聞かれています。

「沖縄はゴルフより美しい海や自然のほうが遥かに世界的価値があるのに、ゴルフとミサイルの島にしないでほしい」「昭和の高度経済成長期に広がった開発ラッシュでもあるまいし、令和の地球危機の時代にゴルフリゾートという今さら感、時代遅れもいいところ」「名蔵アンパルの素晴らしい湿地を『死っ地』にしないで」「自然環境に少しでも理解や配慮がある人なら、この場所にゴルフリゾートなんて言語道断と分かるはず」「観光発展を見込みたいのなら尚更、ゴルフ場やリゾートホテルではなく、豊かな自然をそのまま残すことが最優先」「未来の子どもたちへ残すものとして、名蔵アンパルの美しい景観と豊かな自然を手渡すのか、それとも乱開発で広がったゴルフ場か……大人たちは胸を張って、どちらを子どもたちに手渡すのか? 私は美しいアンパルを残したいです」

2022年9月には、石垣島の海岸に300個以上ものゴルフボールが漂着したニュースも報じられましたが、これは決して珍しいことでもなく、日本でも海外でもよくある現象の一つ。それも、近くにゴルフコースや打ちっ放し練習場がある海ではもちろんのこと、周辺にゴルフ施設がない海域にまで次々とゴルフボールが流れ着き、各地の海を毎日潜っているダイビングガイドからも「なぜかゴルフボールをたくさん拾うんだよ」と聞くことが多々あります。私自身もダイビング中、海底でゴルフボールを拾うことは多く、大人数で水中清掃ダイブをすれば「こんなに?」と首をかしげるほど毎回何十個、何百個というゴルフボールが、あちこちの海や湖で回収されているのも事実です。コースや打ちっ放しから飛んできた、排水溝や用水路から川へ海へ流れ出たなど、はっきりした経路は分かっていませんが、どこからか潮の流れにのって運ばれ、拾っても拾ってもエンドレスになくならない海中ゴルフボールの多さは、ダイバーの間でも「ハテナ???」が消えない謎の一つ。もちろんゴルフボールは自然分解されず、海中で劣化するほどマイクロプラスチックや有毒な添加剤が溶け出し、海洋生物への悪影響も懸念されています。ちなみに、ゴルフ場で池ポチャしたボールを拾うのも、人知れずゴルフ界を支える特殊なダイバーたち。潜水士の資格を持ち、「ロストボールダイバー」と呼ばれる彼らは、ヘドロが堆積して視界はゼロという水中を手探りで、1日数時間の潜水中に何千個、何万個ものゴルフボールを回収しているそうです(なんと、たいへんお疲れ様でございます……苦笑)。

話は戻りますが、先日たまたま耳にしたラジオで、プロゴルファーの方々が「昨今ゴルフ場は減少傾向にある。環境問題も大きな理由で、新規開業が難しい」と話されていました。ゴルフ愛好家にとってはそれもリアルな嘆きであり、一方で環境保全推進派にとっては嬉しい変化……立場によって捉え方はそれぞれ違うことも理解しながら、ここでは海と島をこよなく愛する一人として、背景にある自然破壊や島人の気持ちに心を寄せていきたい。ゴルフ場や石垣島だけでなく、次回は他の離島でも加速する開発のようすも、もう少し掘り下げてみたいと思います。

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