
大人になると、お正月に書き初めをする人は少ないかもしれませんが、新年の抱負をしたためるとしたら、今年はどんな言葉に、どんな想いを込めたいですか? 最新号Vol.30の「いつも心にエシカルマインドを」では、環境問題を「心」から見つめる特集をお届けしました。というのも、実際にどんなアクションをするかももちろん大切ですが、どんな心で、どんな想いで取り組むかがいちばん大切だと感じるからです。どんなことでも、まずは心の在り方で意識が変わり、行動が変わり、習慣が変わり、生き方や人生が変わる。何をするかの前に、まず自分はどう在りたいか……年初の書き初めも、この1年どんな心で過ごしたいかを確かめる、素敵な習わしだなと感じます。
じつは、環境や生態系に配慮する活動を意味する「エコロジー」も、想いの違いから「シャローエコロジー」と「ディープエコロジー」という2つのベクトルに分けられます。「シャローエコロジー」とは人間中心、儲け主義のShallow(浅い)な環境配慮で、とくに経済先進国の利益や自己中心的な動機によるエコロジーのこと。「ディ―プエコロジー」とはその反対で、人間中心ではなく動物や植物、海・川・山の景観や生態系など、すべての生命が等しく尊重される精神で、純粋に地球そのものを深く思いやれるスタイルのことを指しています。
世界もSDGsが掲げられた2015年頃から、エコロジーがマイノリティからマジョリティになり、環境負荷の大きい経済先進国も続々と政府や企業、人々が積極的に取り組み始めました。一方で、サステイナブルやエシカルというワードが一過性のトレンドのように、イメージアップの宣伝文句に使われたり、うわべだけの環境配慮を装ったグリーンウォッシュも増えている、そんなシャローエコロジーも広がっています。環境負荷を減らそうと諸外国が大きな努力を進めているなかで、日本はシャローエコロジーのまま解決策が遅々として進まず、世界の足を引っ張る形で冷たい視線を向けられているのも事実です。そもそも、どんな環境問題も社会問題も経済先進国が招いたもの、それでも被害の多くは罪のない動物たちや途上国の人々が負っているという矛盾も生んでいますが、「問題は見ないフリ」「楽しくないことは続かない」と、日本はまだまだ後ろ向きな傾向も。でももうあまり時間が残されていない今は、人間社会の都合や言い訳に忖度している場合でもなく、利益や勝ち負けを争っている場合でもないのかもしれない。私たち一人ひとりも、できる範囲で政府や企業、周りに働きかけながら、シャローエコロジーではなく純粋に、「私は私にできること」を積み重ねていく、それがきっと巡り巡って一番の推進力になるのだろうと思います。
ディープエコロジーとは、純粋な思いやりをアクションにすることと同時に、地球への愛を感じる心を育むことでもあるそうです。それはたとえば、海に癒され、海にまるごと受け入れられたとき、自然の脅威に震えたとき、やわらかな愛情や畏敬の念がそっと心に灯されるように。波と戯れながら自然との一体感に酔いしれたり、ときには抗えない波に巻かれてもみくちゃになったりもして。海に潜る私はひとたび海中世界に入ると、すっかり人間であることを忘れるのですが、私にとって海の中は「ヒト」ではなくなる時間……そんなところも、海を愛する理由のひとつだったりします。人間であることを忘れ、海の声に、海の仲間たちに寄り添う……私にとってのディープエコロジーは、そんな海愛を心の中心に生きること。皆さんも海と触れ合うひとときに、自分らしいディープエコロジーを大切に感じながら、今年もたくさんの笑顔がこぼれるビーチタイムを刻んでいきましょう!