
いま注目の温暖化対策として、太陽光や風力などを使った再生可能エネルギーが普及してきています。家庭から出るCO2排出量も半分にできるとあって、パワーシフトをする人が増えるのはうれしい変化ですが、「再エネならなんでもOK」というわけでもなかったりします。前回のVol.13で、「環境配慮」を利益やイメージアップに利用する、グリーンウォッシュやシャローエコロジーについて触れました。「地球にやさしい」「サステイナブル」と謳えば儲かる……そんな動機では思いやりが行き届かずに、別の環境負荷を生んでいることもじつはたくさんあります。
温暖化対策に消極的な国へ、皮肉を込めて贈られる「化石賞」まで受賞した日本も、ようやく再エネが広がってきましたが、なかには太陽光パネルを設置するために広大な森林を破壊しているケースも増えています。バイオマス発電やバイオ燃料も、原料を栽培する広い農地が必要で同様の自然破壊をしていたり、洋上風力発電所を建設するにも海の環境や生き物たちの暮らしを奪うことに。人間社会はこれまでにもたくさんの海を埋め立てたりして、そこに暮らす生き物たちの楽園をこれでもかというほど壊してきました。その犠牲を思うと、自然エネルギーを享受するためであっても、建設や運営で環境への配慮を慎重に行っている電力会社を選ぶことも、とても大切になってきます。
シャローエコロジーの裏側に潜む矛盾
一見は環境に良さそうな例をもう少し挙げると、植物由来・生分解性のバイオプラスチックも、原料を栽培するために広大な森林が伐採されて、廃棄しても自然には分解されないものがほとんど。車もガソリン車より電気自動車のほうがいいとはいえ、電力源がCO2排出の多い化石燃料によるものではまるで意味がなく、電池部品となるレアメタルなどを採掘するために、今度はアフリカの子供たちが強制労働させられていたり。洋服でもたとえ素材や環境汚染の一部を改善しても、大量生産・大量廃棄の悪循環はやめないまま。HONEY Vol.28でもお伝えしましたが、環境負荷が第2位のファッション産業は、数えきれない犠牲を払って洋服が作られているのに、毎年何千億着もが捨てられています。日本も洋服の9割近くを海外から、大量のCO2を排出しながら輸入してきても大半はゴミとして焼却処分。「古着は回収BOXへ」「途上国へ寄付を」といっても、世界中から大量の古着が途上国に送られている今は、現地の人々でも着まわせる量をはるかに超えて、大量に積み上げられたゴミの山から、川や海へも古着が流れ出している……。そんな様子を見ていると「洋服は寄付すればいい、プラスチックは自然由来にすればいい、だから大量消費を続けてもいい」という空気には違和感を感じます。洋服や食品ロス、プラスチックなどのゴミ問題の他にも、スマホやパソコン、テレビなどの電化製品も、日本は世界第3位の電子ゴミ量出国になっています。世界の電子ゴミは9割近くが違法投棄されていて、途上国には「スマホの墓場」があちこちに、有害物質も多く含む電子ゴミが大量放棄され、野焼きされ、現地の環境汚染や人々の健康被害まで生んでいるのです
これらはほんの一例ですが、経済先進国のハイパー消費、騙し騙しのシャローエコロジーの裏側では、そんな矛盾が延々と繰り返されている……それを知るだけでも、日常の選択をもっと慎重にしたいと感じる人はきっと多いはずです。最近は「環境にやさしい」というアピールにも一度立ち止まって考えながら、ホンモノを見極める人たちが増えてきましたが、そうして消費者の意識や見る目が変われば、グリーンウォッシュやシャローエコロジーも減っていき、社会は必ず変わっていけます。ディープエコロジーを大切に、地球への思いやりを「本気で」考えているカッコいい人々を、みんなでどんどん応援していく……これからはそんな新常識が、明るい未来を後押ししてくれるような気がしています。