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【連載】地球の今、海の今を知る |Vol.18 海の環境も、何ひとつが欠けることなく

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東京湾を例にして、前回 Vol.17では排水の問題をお伝えしましたが、現代社会は開発によっても、たくさんの海を壊してきました。東京湾だけを見ても、昔は湾内の面積がもっと広かったところを、沿岸のほとんどが埋め立てられ、今では四角い埠頭がずいぶんと海に迫り出しています。HONEY Vol.22の海洋汚染特集で、さかなクンの師匠として知られる海の研究者、「神奈川県水産技術センター」の工藤孝浩さんにお話を伺ったとき、東京湾の今昔をこう教えてくれました。

「東京湾はもともと干潟や藻場が広がる海でしたが、開発によって干潟もかつての9割が消えてしまいました。とくに高度経済成長期は工場や住宅、道路や空港などを作るためにどんどん海が埋め立てられて。コンクリートだけでなく、ゴミの最終処分地としても、東京湾の「中央防波堤埋立処分場」などにゴミが運ばれ海に埋められます。山に埋める自治体もありますが、それでも結局、ゴミに含まれる化学物質などが処理場から排水として川へ海へ流れ出たり、どうしたってどこかの自然を潰してしまうんです。国内では排水規制などで水質が改善した海もありますが、水はきれいになっても、海に生命力がないんです。生き物は戻っても極端に、クラゲだけが大量発生したり、生態系のバランスまではなかなか戻らない。水質だけ綺麗になればいいわけじゃなく、目指すべきは“豊かな海”……それにはやはり、壊してきた環境や自然のつながりを見つめ直す必要もあるんです」

–{干潟や藻場けでなく、砂浜にも変化が}–
かつて日本の沿岸で当たり前に見られた干潟や藻場も、山や陸地から届く窒素・リンなどを取り込んで、富栄養化を起こさないようバランスを保つ役目もあり、「海の浄化槽」と呼ばれます。もちろん、干潟も藻場も多彩な生き物たちの棲み家であり、アマモ草原のような藻場は、光合成によって陸上の森林よりはるかに多くCO2を吸収し酸素を作り出します。そんな干潟や藻場が消滅しただけでなく、砂浜にも変化が感じられるという工藤さん。

「環境によって異なりますが、砂浜の多くは、山が削られた土砂が川を伝って運ばれ、海辺にビーチが作られます。たとえ台風が来て砂が減っても、山と川から新しい砂が次々に補われるので、砂は常に更新されているんです。それが、現代は土砂崩れや洪水を防ごうと山や川の護岸工事で固め、それによって砂の供給が止まって砂浜が痩せ、テトラポットや防波堤も増え、おまけに海面上昇もあって、日本の海岸線は大きく変わりました。環境が潰されれば生き物たちの棲み家は奪われ、海もどんどん痩せてしまうんですよね」

–{「ただの砂地も」自然界にとっては大切な役割}–
一見スルーされてしまうような「ただの砂地」でも、自然界にとってはたいせつな役割があってそこにあり、欠けてはならない環境……それはどんな場所にも言えることです。何もないような海底の砂地にも生き物たちの巣穴や隠れ家がたくさんあり、ヒラメやカレイなんかもこっそり身を潜めているような、彼らの大切なおうち。それが今は海砂の需要が高いとあって、国内外のあちこちで、巨大なポンプが掃除機のごとく海底の砂をごっそり吸い上げていきます。海砂の採取も海洋開発も、もっと言えば陸の開発も、そこにのんびり暮らしていた生き物たちにとったら何がなんだか訳もわからず、いきなり辺り一帯の環境が消え、家族や仲間たちも失って……。それは津波や台風で家や街がたちまち壊されてしまったときの、大きな傷や痛みと同じのような気がします。そうしてたくさんの環境や生き物たちの楽園を、根こそぎ破壊してきた現代社会。最近はそんな環境破壊を見直そうと、欧州をはじめとする環境先進国では、埋め立てや護岸工事などで一度潰してしまった川や海を、元通りの姿に戻そうという動きも進んでいるそうです。そうした俯瞰的な原点回帰も、日本や世界にどんどんと広がっていくといいなと願っています。