
パンデミック後にカリフォルニアを旅したサーフィンフォトグラファーのトーマ・ロダン。
フランスを代表するフォトグラファーの彼曰く「今、ログの世界は女性が面白い!」。
そう言わせたのは、カリーナ・ロズンコとローラ・ミニョンとのセッションだった。
HONEY WEBでは、前編でトーマが撮影した2人の美しいライディングショットを公開し、
後編でトーマ自ら2人に行ったインタビュー記事を紹介します。
10月の早朝、高速道路をサンディエゴ方面に1時間半ほど走り、待ち合わせのカーディフに到着した。約束したのはジョエルとトッシュのチューダー親子、カリーナ・ロズンコ、ジャスティン・キンタル、ジミー“ジミケーン”ウィルソンという面々。
紅一点のカリーナはレギュラーフッター。サンオノフレのピークに慣れている彼女が、カーディフを訪れることはあまりない。しかも数ヶ月前にバリ島へ引っ越したばかりだ。今回は“ジョエル・チューダーのレフト”に乗るために参加した。
ちょうどそこに、ロングボードを積んだトヨタSR5ステーションワゴンが入ってきた。ハンドルを握るのはカリーナだった。

朝のアメリカンコーヒーを飲み終える頃、潮まわりがよくなり始めた。曇り空だが無風。ボトムの玉石が透けて見えるほどクリアな水面とグレーの空が、絶妙なニュアンスを創り出している。この日集まったサーファーはカリーナ以外全員グーフィフッターだったが、彼女がバックサイドに手を焼く様子はなかった。しなやかで柔らかいスタイルは美しく、誰よりも存在感を放っていた。一滴の水しぶきを浴びることなくテイクオフし、岸まで乗り繋いでいった。
2018年、わたしはマリブビーチの壁にもたれかかっていた。するとそこにメキシコから帰国したばかりのデーン・ピーターソンが現れた。彼はわたしが尊敬する素晴らしいサーファーのひとりで、シェイパーで写真家だ。わたしたちはその日を境に頻繁に連絡を取り合うようになり、今回も彼がプロデュースするブランド「Unhinged Surfboards」のフォトセッションを一緒に行うことになった。ライダーはローラ・ミニョン。わたしたち3人は早朝のマリブの駐車場で待ち合わせた。

メキシコがホームのローラは慣れない寒さにもかかわらずテンションは高め。なぜなら、デーンが彼女のリクエストに応えてつくったニューモデル「La Lola」の試乗を兼ねていたから。波のサイズは小振りだが、形のいいセットが次々と入ってくる。穏やかな朝の光はビーチから見ると逆光となり、ローラのシルエットを幻想的に浮かび上がらせる。スタイリッシュなライディングはまるでバレエを観ているかのようで、気がつけば時刻は正午を回っていた。
フランスに戻る前にもう一度カリーナとローラを撮影したくなり、サンオノフレで待ち合わせをした。時間をかけて彼女たちのサーフィンを観察すると、とても繊細なライディングをしているのが分かった。計算されたかのような無駄のない動きとリズム、そしてフロー。力みなく、しかし即興を奏でる余地も残している。とてもレベルの高いことを、さも簡単なように見せるローラ
とカリーナ。わたしはその一瞬を逃さないよう、夢中でシャッターを押し続けた。



※後編のインタビューに続く
Her Wave 海のそばで暮らす彼女の物語#36/Madison Jung

愛おしき、メキシコ・プエルトで出会ったサーフガールたちvol.2

悲しみを乗り越え、再生したタイ・カオラック|そこで出会った2人のサーファー

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