移住先は“海の上”。波を追い続け、辿り着いたヨット暮らし_Episode1

海、そしてサーフィンに魅了され、世界各国を巡ったのちにヨットを購入。現在は1年の半分を地中海の海の上で暮らしているKazumiさん。そんな彼女の海×旅のストーリーを3回にわたって紹介します。
1回目となる今回は、「海の上の移住」に繋がった、日本の島々へのサーフトリップ、そしてオーストラリア・バイロンベイでのサーフィンライフについてのストーリーです。


サーフィンとの出合いから「海の上へ移住

私のサーフィンとの出会いは大学生の頃。当時、地元京都のサーフショップのスクールで海に通い詰めていた。海から遠く離れた土地で育ったからこそ、海への憧れが一層強かったのかもしれない。

一番近いサーフポイントでも京都からは4時間。そんな長距離移動も毎週末ロードトリップに出かけているような感覚で、胸が高まっていた。

社会人になってから東京に引っ越し、シェアハウスでサーフィン仲間を作って千葉の海に通うように。同時に、日本の離島や近郊の国へサーフトリップへ出かける機会も増えていった。

もともと旅が大好きで、国内外をバックパックで巡ることはあったが、サーフボードを担いで出かける旅はさらに高揚感が増す。サーフトリップではいつも、新しい波と同じ趣味を持った人たちとの出会いが待っている。

種子島、新島など離島の海はどこまでも青く、島国である日本で暮らしていてもなかなか感じることのできない、解放感がある。島ならではのゆるい雰囲気や、時間の流れ、湿った空気が旅を盛り上げてくれる。日本語が通じるのに、どこか本土とは違った空気感や旅感を味わえる離島の旅。まだ行ったことがない人には、ぜひおすすめしたい。

ヒップなサーフタウン・オーストラリア・バイロンベイへ

そんな旅を仕事の合間を縫って繰り返しているうちに、いつしか海外で生活してみたいと考えるようになり、30歳になる直前にワーキングホリデーでオーストラリアへ行くことを決意。

ただ、出発まで多忙だったこともあり、何の下調べもしないまま出国。どこに住むかさえ決めずに日本を旅立った。住む場所の条件はただ1つ“サーフィンができる町”。そこに偶然、昔インドを一人旅していた時に知り合った知人がバイロンベイに住んでいることを思い出し、連絡をとってみることに。するとすぐに会ってくれて、住む家が見つかるまで家に泊めてくれたり、現地の友人を紹介してくれたりと、色々と面倒をみてくれた。

バイロンベイは小さなサーフタウンで、ヒッピーなムードがあふれる場所。この町に魅せられたアーティストやサーファー、ヨギーたちが集まり、独特の雰囲気を醸し出している。

行き交う人たちはとてもフレンドリーで、すれ違うときみんな挨拶をしてくれる。また、バイロンベイはオーガニックが有名な町でもあり、マーケットの日には新鮮な無農薬野菜や、現地アーティストが手掛けるナチュラルな雑貨、自然派コスメなどが手に入る。

町は小さいながらも、バイロン出身のファッションブランドやサーフショップ、オーガニックレストランやコーヒーロースターなどがたくさんあり、歩いているだけでもとても楽しい。

一番人気のサーフポイントと言えば、メインビーチの東側に位置する「ザ・パス」。ほかにも、その日のコンディションに合わせてサーフィン可能なポイントがいくつもある。バイロン岬はオーストラリアの最東端に位置するため、この周辺の海岸にはコンスタントにいいうねりが入ってくるのだ。私も学校の授業が始まる前や仕事の合間を縫って、毎日自転車で通っていた。

孤独と向き合った豪東海岸ロードトリップ

バイロンベイで数ヶ月を過ごした後、クルマにサーフボードを積み込みロードトリップに出かけた。これまでに何度も一人旅をしてきたものの、今回の旅は少し違う。旅先の宿や移動中の乗り物の中での出会いがいつもの旅のスタイルだが、今回は自分のクルマで移動し、車内で宿泊。1人で全てを完結できてしまうため、より自由である反面、孤独な旅でもあった。

“先に進みたければ進めばいいし、止まりたければ何日でも止まればいい”。誰に合わせる必要もないし、波の良いポイントを見つけてはクルマを停めて海に入り、ただ気の向くまま思うがままに旅路を進めばいい。最初のうちは目の前に広がるまっさらな自由な旅に心を躍らせていたものの、徐々に孤独と不安が心身を蝕み始めた。

そんな状態が数週間続いたある日、ついに体の震えが止まらなくなり、路肩にクルマを停めて泣き出してしまった。その場で友達に電話をかけ、話を聞いてもらうと少し気持ちが落ち着いた。一人でいる時間も大切だけど、人は一人で生きていけないことを改めて気付かされた。

その後は少し旅路を急ぎ、気心知れた仲間のいるバイロンベイに戻ることに。現地で仕事を見つけ、またバイロンベイをベースに近郊のポイントで海に入る生活を続けていた。

この時の経験は、今では私の宝物のような時間に。その後たくさんのサーフタウンを訪れたが、あれほど素敵な町は見たことがない。そう思えるのはバイロンベイという町自体が好きだったこともあるが、それ以上に甘くて苦い思い出がたくさんあるからかもしれない。

そして、この後に向かったバリで、人生を大きく変える経験をすることになる。その話は、また次回に。

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