どんな未来に、どんな自分で進みたい? 【連載】地球の今、海の今を知る Vol.56

日本でSDGsやサステイナブルなモノ・コトが身近に溢れるようになったのは、ここ数年のことだけれど、すでに半世紀以上も前から、地球の悲鳴も、警鐘も、ずっとずっと鳴り響いてきた世界。それを裏付ける一つに、アメリカの科学雑誌『Bulletin of the Atomic Scientists』は毎年、人類滅亡までの残り時間を表す「Doomsday Clock(終末時計)」を発表していて、2022年は3年連続で過去最短となる「残り100秒」に。人類が滅亡する最後の日を午前0時とし、それまでの残り時間を象徴的に示した終末時計、このカウントダウンが始まったのは遡ること75年前、1947年に「残り7分」からスタートし、今年1月の発表では「1分40秒(100秒)」にまで針が進みました。

現代の社会・経済システム、環境破壊が続くようではそのうち人類文明がブレイクダウンしてしまう……その危機がどれくらい差し迫っているかを伝えるこうした警告は、今では悲しいほどにあちこちで聞かれます。以前に触れたVol.12Vol.02で紹介した「Climate Clock(気候時計)」は今年から東京でも小型版が設置され始めましたが、こうしたタイムリミットを見るたび思うこと……それは、これほど長いあいだ危機が叫ばれているのに、どうして状況はどんどんと悪化していくのだろう、という素朴な疑問。今のままでは確実に地球環境や生態系が崩壊する=人間社会も崩壊することは、何十年も前から科学者たちの間で予測・警告されてきたこと。それでも改善されるどころか、まだまだ目先の利益や物欲がいちばんで、むしろ地球の危機さえもビジネスチャンスにしながら、一部の人たちだけが儲けているような社会。

ただ、こうした現象は「正常性バイアス」という、人間の一つの心理現象として紐解くこともできます。たとえば気候変動をはじめ、地球のさまざまな危機を耳にはしても、それが自分にとって都合が悪い場合、または自分の仕事や習慣を変えることに抵抗や不安があるとき、その現実を受け取らずに耳を塞いだり否定したり、または過小評価して「たいしたことない」と思い込もうとする。これは社会心理学や災害心理学などでよく分析されますが、「たいしたことない」と過小評価する人が多ければ多いほど対処は遅れ、リスクは大きく広がり続け、災害時であれば逃げ遅れる原因にも繋がる心理なのだそう。環境危機の場合は個人だけでなく、大きな組織や作り手側が利益を優先するために、意図的に悪影響を伏せたり過小評価したり、そうして問題が悪化していることを横目に見ながら、経済の発展を最優先に選び取ってきた長い歴史も今に繋がっています。

とはいえ社会システムや組織の問題となるとハードルが高いけれど、そんな心理作用が働くことも知っておきながら、自分と違う意見や姿勢の人がいたときには、たとえば「正常性バイアスのような心理もあるんだな」「見ている世界・生きている世界が、ただ違うだけなんだな」と、違いを理解する。その上で、自分は自分で、同じ志や在り方を大切にできる仲間と一緒に歩むことを選択する。なぜなら、危機や問題を前にしたとき、自分はどういう存在でありたいかを選ぶのは人それぞれの自由だから。耳を塞いで無関心を選択するのも自由だし、危機をビジネスにして儲けるのも自由。でも私は、「本当の解決策って? 私にできることってなんだろう?」を考え続けたい、と思うのも自由。調和を目指したいのに、意見の違いから対立や争いになってしまったらなんだかストレスに感じてしまうから、それより、人それぞれの違いや多様性も理解しながら、けれども何より自分が心地よく在れるほうを選択することも、地球への思いやりを純粋に保つ大切なヒントなのかもしれません。

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