
一昨年の春、思い切ってタイにベースを作ったプロサーファーの間屋口香。世界中を旅して回った経験のある彼女が、当面のデスティネーションとしてタイを選んだ理由とは。今回は後編をお届けします。
“自分の時間とスローな生活を大切にしたい、そう思った。
間屋口香
ここタイでは、それができている気がする”

移住の背中を押したガールズサーファーの存在
移住前にプーケットを訪れた時、あるサーファーと友達になった。香さんがスポンサードを受けている日焼け止めブランド、ココサンシャインのタイのディストリビューターをしているユイちゃんという女の子。ユイちゃんは日本語が話せるから、タイのカルチャーを教えてくれたり通訳を買って出てくれたりして、すぐに仲良くなれた。彼女の存在は大きく、プーケットや1時間北上したサーフエリア、カオラックのサーファー友達をたくさん紹介してくれた。それによりぐっと移住のハードルが下がったという。

波乗りを心底愛するユイちゃん。住んでいるバンコクから波乗りができるプーケットまでの交通手段は12時間運転をするか、1時間半飛行機に乗ってくるかのどちらかというなかなかタフなものだが、それでも毎週のようにプーケットへサーフィンしに来る。しかもひとたび海に入れば、ランチも忘れて何時間も入りっぱなしというほどの夢中っぷり。向上心が高く、サーフィンのスキルについて香さんが質問攻めにあうこともしばしば。今では香さんの家に毎週泊まるほどの仲になった。
ユイちゃんのビジネスパートナー、ヴァーンちゃんと友人のオムちゃんもいつも一緒にバンコクから訪れる。タイでは彼女たちのような熱心な女性サーファーがとても多く、みんなエネルギッシュで、ラインナップにいると女の子の声しか聞こえないほど。海の中はいつでも明るい。女の子たちは皆、香さんが短いボードでリッピングしたり、ログでウォーキングする姿を沖から憧れの眼差しで見つめている。
今後おもしろくなりそうなタイのサーフシーン
タイはサーフィンができる国として昔からよく知られてはいるが、まだまだメジャーではない印象。でも一度訪れてみると、いい波があり、いい人がいて、何度も訪れたくなる心地良いサーフトリップ先だとわかった。香さんはそんなタイのサーフシーンをどう見ているのか。

「今まさに成長中で、これからさらに伸びそうな気がしています。カルチャー、意識、日本よりもコンスタントにウネリが入る波のポテンシャル。特にロングボードのレベルが高い。今後海外に出る選手も増えるんじゃないかと。今はみんなが同じものをかっこいいと思って、同じところを目指しているけど、そのうちオリジナリティがある濃いサーファーも出てくるんじゃないかなって。10年、20年後が楽しみです」

タイ・サーフィンのベストシーズンは5月〜10月。しかし1年中波があり、サーフィンができるのがタイの魅力だそう。プーケットやカオラックへトリップに行くときには「いろんな要素が楽しめる場所、というのを念頭に置いてほしい」と香さん。
プーケットならショートボードでもサーフィン可能だが、ミッドレングスやロングボードのほうがおすすめ。香さんもタイに来てからは長いボードでのクルーズを楽しむことが多くなった。
レンタルボードショップも多いから、初めてサーフィンにトライする人もぜひ来てほしい。また、海の中の雰囲気がすごく良いのもタイの良いところだと教えてくれた。ローカリズムも厳しくなく、誰でも笑顔溢れるサーフィンを楽しむことができる。今後はサーフトリップ先の有力候補としてカウントしたい。




* * *
これまでの香さんはトリップに出かけては、冒険家のようにまだ見ぬ波を追いかけて探索し続けてきた。彼女によって新しく開拓されたスポットもいくつかある。今回タイへ移住したことによって、サーフスポットとしてのタイの魅力も再発見された気がする。今後日本のサーファーにもこの魅力が理解され広まっていくはず。
「私自身サーフィンがどんどん上手くなってるし、どんどん楽しくなっている」
タイで一緒に過ごす中でふと出てきた彼女の言葉が印象的だった。サーフィンは奥深く、香さんはまだ旅の途中。次はどんな物語を私たちに語ってくれるだろう。
Chasing Waves監督のジェイソン・バッファにインタビュー! 彼が見た日本のサーフシーン

Her Wave 海のそばで暮らす彼女の物語#32/Pepä Ivanoff

プロサーファーの現在地 vol.1/東京・自由が丘にオープンしたサーフブティック『ROAMERS & SEEKERS』を大解剖!

コメントを投稿するにはログインしてください。