
自然界には無駄なことはひとつもなく、
──HONEY Vol.22「LOVE more SEA」より
どんな存在にも大切な役割があり、
そのなかで「人間には自然がバランスよくあるよう見守る役目がある」と、
ハワイでは古くから言い伝えられてきたという。
海が魅せる神々しいほどの自然美に触れ、
畏敬の思いにふるえるとき、
忘れかけたそんな使命を、そっと胸に思い出させてくれるような気持ちになる。
海とともに生きるその中で、どんどんと壊されてゆく海を見ながら漠然と「何とかしたい、けれども自分には何ができるんだろう?」と、どこか歯がゆいような気持ちを抱えてきた人もきっと多いのかもしれない。かくいう私もその一人、長い間ずっと、海のためにできることを探し続けていた、そんなあるとき、ハワイの先住民に伝わるこんなお話を聞いた。
「地球上のすべての生命は、みんなそれぞれ役目を持ってこの世界に生まれてくるんだ──」
それは例えば、モグラたちには土を耕すような役目があって、百獣の王といわれるライオンたちにはサバンナを統治する役目があって、海では凶暴さが目立つゆえに恐がられるサメたちもじつはサンゴ礁のバランスを保つために重要な役目を持っていて。
小魚だって、大きな生き物に「食べられる」ということも、「次に生命をつなぐ」という意味でとてもたいせつな役目があるんだと。それなら、自然の一部として生きる人間はというと、「自然がバランスよくあれるように、見守る役目があるんだよ」と。
ハワイアンにかぎらず、ネイティヴアメリカンのような先住民たちも皆、「この世界は自然のもの」という精神で大地や海を汚さないこと、恵みを採ったらきちんと感謝すること、お返しすることを、太古の昔から何より大切にしている。
そんなスピリットにいくつも触れながら、今この世界を見つめ直してみると、私たちは自然を見守るどころか、「この世界は人間のもの」のように、自然を壊して生命を傷つけて、自然を支配し都合よく利用するような世の中になっていた。と同時に、そんな現代社会に暮らしている限り、今ここの私には「自然のバランスを見守る」ことなんてできっこないとも思い込んでいた。
たしかに、みんなが先住民の教えに習って暮らしを見直せるならそれが最善なのかもしれないけれど、すぐにはハードルが高い。
じゃあ、どうしたらいい? 悶々とそんな自問自答を繰り返していくなかで、「そもそも海が、地球が、こんなに壊されている原因って一体なんだろう?」とその源をぐんぐん遡ってみたら他でもない、私のありふれた日常に辿り着いた。
「地球を救う」なんて壮大に思えていたことが、意外にも答えは目の前にあって、なんでもない今ここの私から、すぐにできることだと知ってハッとした。
「私の毎日が、こんなふうに海を壊してきたなんて……」
その一端に気づき始めたとき、最初はショックでたまらなかったけれど、「それなら、一つひとつ原因を知って、それを手放して、あとは地球が元気を取り戻す姿を“見守る”……それでいいのかも!」そう思えたとき、どこか重責のようだった「人間としての役目」が、なんだかとても身近なことに感じられて、スッと肩の力が抜けた気がした。
「自然を見守る」ってなにも特別なことじゃなくて、大自然の真ん中にいないとできないわけでもなくて、誰でも今ここから、いつからでも気負わずできることなんだって。
たとえば先住民のように太古の叡智に習って暮らす人たちだけが、はたまたナチュラリストと呼ばれる人たちだけができることでもなくて、「自然とバランスを取って生きる」ってほんとうは、呼吸をするように当たり前なこと……そんな気づきがどんどん広がって、この地球にしかない美しさと豊かさを、ずっとずっと未来につないでいけますように──。
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