プロサーファーの現在地|水野亜彩子 vol.2/プレイヤーからコンテスト解説者へのセカンドキャリア

コンテストで勝ちたい。その想いが導いたプロサーファーの世界。10年間コンテストに本気で向き合い、努力を続けてきた彼女に新たな転機が訪れる。それは視聴者にサーフィンコンテストの魅力を発信する、解説者への道。新たな視点で見るサーフィンに、彼女はまた魅了される。


15歳でプロサーファーになった水野亜彩子さん。「サーフィンが好き」その一心で突き動かされてきた彼女は、プロになるとトップを目指した。しかし21歳のとき、ある苦い思いをする。

「最終戦で2位までに入ればグランドチャンピオンになれるという特別な1年でした。でも最後の試合は3位だったんです。そのときのなんとも言えない気持ちは、今でも鮮明に覚えています。じゃあ来年目指すのは1位しかない! そう思いつつも、どんどん順位が下がってしまったんです」

モチベーションが保てなくなった彼女は、オフシーズンにカリフォルニアに渡り、サーフコーチの元で3ヶ月間トレーニングを受けた。今までは感覚でサーフィンをしていたのを、ロジカルにしようとしたのだ。基礎から見直しテクニックを磨く。帰国後「上手くなった」と声をかけてもらうことも多かったが、大会で成績を残すことができなかった。

「プロの世界の厳しさを知りました」と水野プロ。自分の実力を痛感した彼女は、その後大会からは距離をおいた。このとき25歳。プロサーファーとして10年、大会に出続けた彼女にとって大きな決断だった。

「大会に出ることはやめましたが、その後のことは何も考えてなかったんです。いつも目の前のことに一生懸命な性格で。そんなとき、たまたまJPSAの解説者をやらないかと声をかけていただきました」

子供の頃から感覚でサーフィンをやってきた水野プロは、解説をすることで新しい楽しみに出合う。それはサーファー以外にもわかりやすく、サーフィンの魅力と大会の面白さを伝えること。客観的にサーフィンを分析しながらも、わかりやすい言葉を選ぶ。プレイヤーだった頃とは違うその感覚は、彼女の新しい才能を開花させた。

実況 nico

「解説という仕事を始めてから、次世代のサーファーと触れ合う機会も増えました。私の頃と違って、今はプロサーファーとして大学の推薦も受けられる時代。文武両道のサーファーが多く、試合運びにも頭の良さを感じます。最近はコーチングシステムも確立されているからか、どの選手も本当に基礎がしっかりできていて。ロングボードとショートボードの乗り方は全然違うけれど、二刀流で活躍するプロも増えていますよね。器用だなあといつも感心してしまいます」

大会に出場していた頃は頑なにショートボードしか乗らなかったが、最近はツインフィンにも乗るようになり、新しいサーフィンの楽しさを味わっている。次はロングボードに挑戦したいそうだ。

「サーフィンがオリンピック競技になった今、解説者としてどうサーフィンの魅力を伝えていくかさらに模索中です。サーフィンは自然相手なので、開催場所は決まっていても全員に同じ波は用意されていない。対戦者との戦いのほかに、自然との戦いがあるんですよね。ほかのスポーツならば、ある程度はその人の実力で勝敗を事前に予想できますが、サーフィンは違う。どんなに上手い選手でもいい波を掴めなければ実力を出せず負けてしまいます。それは逆に、誰でも優勝できるチャンスがある、とも思えるんです」

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