
海の恵みに限らず、地上の動植物も、
──HONEY Vol.31「NO Earth, NO Us #05 世界の海から、魚たちが消える日」より
それを育む大地も、食も服も薬も紙も木材も、大気も水も……
毎日の衣食住を多彩な生命に支えられ、
私たちはその支えなしには少しも生きられない。
とかく私たちは、人は人、動物は動物、植物は植物、細菌は細菌……と、それぞれに境界線を引いてしまいやすいけれど、広い視野で見るとやっぱりどこかで繋がっていて、たった一種、たった一人では誰も生きてはいけなくて、地球に生きる生命は皆、思っているよりずっとずっと共通点が多いように思う。
それぞれにライフスタイルが違うだけで、どんな生き物もかならず空気や水、食べ物や暮らしやすい場所がなければ生きてはいけなくて、大気に酸素がなければ呼吸ができず、二酸化炭素がなければ光合成もできない。
作物や木の実も、それが育つには種を運ぶ動物やミツバチのような花粉媒介者が欠かせないわけで、トマトひとつにしても、その実を育てた苗木はもちろん、赤く食べごろになるまでにはたくさんの養分や水、小動物や菌類、太陽と大地の支えがあってこそ。
みんなが生きるために必要な水も、太陽と海の最高タッグがなければ得られないもので、その海が豊かに育まれるのも、極小生物から始まる食物連鎖が無限に繋がっているおかげ。
私たちが病気になったときに必要な薬も、多くは自然界の薬草や海の生物から作られ、毎日の食事も健康も、洋服や仕事のアイテムも、呼吸をするだけだって海や森でたくさんの生命たちが酸素を作ってくれてこそ。
とはいえ、そんな風に私たちを支えてくれるたくさんの生き物たちは、決して「人間のためだけ」に存在しているわけじゃなく、地球がくれる恵みも人間だけが、先進国だけが独占していいものでも決してない。
これまで何十億年と豊かに育まれてきた生物多様性が今、瀕死なまでに崩壊している。
「身近に野生生物がいないから実感がない」という声も多いけれど、たとえばどこか近くの畑や公園でも、蝶や虫たちの姿をあまり見かけないことにゾッとしたり、気づいていないだけで実は身近にも不気味な変化はたくさん起こっている。
この危機を別の表現で言い換えるなら、これまではご馳走がいっぱい詰まった豪華なお弁当が食べられていたのに、いつしか白米と梅干しだけの日の丸弁当しか食べられなくなる、白飯と梅干しが食べられればまだマシ……といったイメージに近い。
すでにもう、気候変動や農薬・化学物質汚染などが原因で、世界各地でミツバチの大量死が頻発し、絶滅も危惧されるけれど、私たちがいただく食べ物の1/3は、ハチやチョウといった花粉媒介者が受粉を助けてくれるからこそ育つもの。
そのハチがいなくなると、それだけでお米や野菜、果物やナッツなどが当たり前に食べられなくなる。
ハチに限らず、今のペースでどんどんと種が絶滅していけば、自然からの恩恵もみるみる消え失せて、いずれは人類も……生物多様性の喪失とは、そういう未来に向かっているということ。
すでに先進国の過剰消費や気候崩壊などが原因で、人も動物も食べ物に困っている地域がたくさんあるいっぽうで、先進国には有り余るほど、とくに日本は半分以上の食材を海外から大量の温室効果ガスを排出しながら運んできては、よりどりみどりのグルメがいつでも食べられるけれど、それも食べきれないまま大量に捨てている毎日。
ちなみに今日はバレンタインデーだけれど、この日にチョコレートを贈るのは日本独自の習慣で、それもお菓子業界が仕掛けたマーケティング戦略から広がったもの。その背景ではチョコレートの原料であるカカオやパーム油を大量に生産するために、世界各地で森林伐採や農薬による自然破壊、土壌・水源・生物多様性の喪失、さらには児童労働、低賃金による貧困、労働者の健康被害などが深刻な問題に。生産プロセスだけでなく、こうしたイベントの後にはもれなく、バレンタイン商材、ハロウィン商材、クリスマス商材などの大量廃棄も毎年恒例で、昨今はその是非を問う声が年々大きくなっている。
そもそも今のような利益至上主義が当たり前な社会では、自然環境や生命たちをどれほど犠牲にして生産されるか、その背景はあまり意識もされないけれど、「今日を元気に生きるために、どれだけの生き物たちが私を助けてくれているのだろう」と静かに思い巡らすとき、私はよく、ドイツの博学者アルベルト・シュヴァイツァーが提唱した「生命への畏敬」という思想を思い出す。
「人間とは、生きようとする様々な生命にとりかこまれた、生きようとする生命である。
──アルベルト・シュヴァイツァー
この事実を認めることによって、人は単に生きるのではなく、生命への畏敬を持つ。
生命に真の価値を見出そうとする。
このように考える人間は、自分の生命に対するのと同じように、あらゆるものの生命に畏敬の念を抱くことになるだろう。
人はこうして、自分の生命の中に他者の生命を体験するのである」
私の今日を支えてくれる数えきれない生命たちを思い、あらゆる生命を敬い、感謝して生きる──。
生物多様性のつながり、その危機を強く感じてからはとくに、今ここで呼吸ができること、おいしいごはんが食べられること、美しい水で心身を潤せること、いろいろな瞬間がこれまで以上に尊くて、ありがたくてたまらない……そんな気持ちをますます深く感じている。
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