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【連載】地球の今、海の今を知る|Vol.20 地球上からサンゴ礁が消えゆく前に

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全海洋生物の1/4もが暮らすサンゴ礁、そこはまさに尊い生命の揺りかごですが、地球全体ではすでに半分以上が消えてしまい、世界屈指のコーラルガーデンを擁する沖縄も、本島周辺は9割、八重山諸島でも7割近くのサンゴ礁が消滅してしまいました。原因の一つとして広く知られているのは、地球温暖化。サンゴは褐虫藻という植物プランクトンと共生し、褐虫藻はサンゴから窒素などの養分を提供してもらいながら光合成をして、必要な栄養やエネルギーを作り、サンゴにも養分を分け与えています。それが、海水の温度が上がると褐虫藻がサンゴから抜け出て白化が起き、水温が下がって褐虫藻が戻れば復活できますが、高水温が長く続くとサンゴは栄養がもらえずに死滅します。とくに1997年頃から、世界中で大規模な水温上昇と白化現象が頻発するようになり、消滅するサンゴ礁は広がるばかり。温暖化で台風の頻度も乱れ、海水が攪拌されないまま高水温が長く続くことも原因で、台風が巨大化してサンゴが根こそぎ破壊されることも増えています。何kmにも広がっていた華やかなサンゴ礁が、台風によって草刈り状態となってしまい、次に行ったときには見渡す限り、サンゴの瓦礫……私もそんな光景に思わず涙したことが、何度もありました。

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温暖化だけでなく、近年は増えすぎたCO2が海水のpHを低下させる海洋酸性化、日焼け止めに含まれる有害成分、マイクロプラスチックなども、サンゴの成長を阻害することが分かってきました。Vol.19でお伝えしたような乱開発も大きな要因で、とくに沖縄は「赤土」と呼ばれる粘土質の酸性土壌で覆われ、開発地域や農地などから赤土が海へ流れ込むと、美ら海はみるみる鮮やかさを失ってしまいます。海の中は濁り、日光も届きづらくなるため褐虫藻は光合成ができず、サンゴも呼吸ができずに死滅していくことになります。さらに追い討ちをかけるように、「オニヒトデ」というサンゴを食べる天敵の大発生も多発しています。原因は自然増減説、オニヒトデを食べる捕食者の減少説、富栄養化、と諸説ありますが、富栄養化が最も有力とされ、農地の肥料や畜産廃物、生活排水などに含まれる窒素・リンが、過剰に海に注がれることで植物プランクトンが増殖し、それを餌に育つオニヒトデが頻繁に異常発生。富栄養化はVol.08のような海のデッドゾーンを広げるだけでなく、こうしてサンゴ礁の脅威にも繋がっています。


鋭い刺に覆われて、直径20~50cmにもなるオニヒトデ。サンゴの上に乗って食べている姿をよく見かける

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オニヒトデは、地元の漁業者やプロダイバーたちが1匹ずつ串刺しにして回収する駆除活動も行われますが、人が刺されると危険な猛毒を持っていて作業もひと苦労。他にもサンゴを食べる巻貝の「シロレイシガイダマシ」、近年は新たに「テルピオス」という海綿動物による食害まで広がっています。シート状のテルピオスは、骨格に食い込むように張り付いてサンゴを殺し、広範囲のサンゴ礁をあっという間に真っ黒にすることから「黒い悪魔」とまで呼ばれています。水温が高くなると繁殖する傾向があるそうですが、詳しい生態はまだ不明で、テルピオスの場合は人の手で剥がすこともできず、黒く死にゆくサンゴを見送るしかないのだそうです。

私もダイビングを通して20年以上、あちこちで消えゆくサンゴ礁に胸を締め付けられながら、オニヒトデの駆除に同行したこともあります。が、個人的には「オニヒトデは何も悪くない」という思いのほうが勝り、1匹も駆除できず見学に終わりました。他にもサンゴの植え付けや水中清掃など現場でできるフィールド活動も参加していますが、対症療法よりも原因をなくし、サンゴ礁を失わせないことが最優先じゃないかなと。そしてそのヒントは一人ひとりの暮らしの中にあって、温暖化対策はもちろん、排水やゴミ、日焼け止めに配慮する心が、世界中に広がっていくことのほうがずっとずっと、海を救える大きなパワーになる……そんな風にも実感しています。


減っていくサンゴ礁を前に、沖縄などでは人工的に増やしたサンゴの苗を植え付ける活動も行われている