
地球上の何千万種ともいわれる全生物の、たった一種でしかない「ヒト」は、
HONEY Vol.31「NO Earth, NO Us/#05 世界の海から、魚たちが消える日」より
この星に生命が生まれて40億年以上もかけて育まれてきた豊かな環境と生物の多様性を、
このたった50年近くであっという間に、瀕死なまでに崩壊させてしまった。
WWFが発表した「Living Planet Report:生きている地球レポート2020」によると、
1970年からの約50年間で、すでに地球上から2/3もの脊椎動物が姿を消してしまい、 地球危機のトップマターに挙がるほど、残り1/3の減少・絶滅スピードもその加速が止まらない。
過去50年という間に、地球上で暮らす脊椎動物のおよそ2/3もが消えてしまった……「これから消えるかもしれない」ではなく、「もうすでに消えてしまった」という調査結果を初めて知ったとき、息が止まりそうなくらいの衝撃を受けた。今からおよそ46億年も前に誕生した地球にとって、この50年という時間は「あっ」というほど短いはずだけれど、それがいったいどんな意味を持つのだろう……ふと、そんなことを知りたくなって、ちょっと地球の歴史を駆け足で振り返ってみた。
46億年前に誕生してから数億年、真っ赤なマグマの海でしかなかった生まれたての地球は最初、なんの生命も存在しないまま、水蒸気や二酸化炭素がまわりを覆うだけの星だったそう。
それから5億年ほどが経って、地表が冷えてきたところに、まわりの水蒸気が水のようなものになって集まり、何千年も大雨が降り続いたあと、やがて「海」ができた。この海こそが生命誕生の舞台であり、海底では水素や二酸化炭素の分子同士が反応して有機物が生まれ、地球で初めての原始生命が誕生した。
そのあと10億年近くは、地球の大気にはまだ酸素がなかったけれど、今から約30億年近く前にシアノバクテリアが誕生したとき、彼らの細胞内にある葉緑素が光合成をして地球に酸素を作り出したことをきっかけに、生命進化の歴史は大きく変化していった。
さらに20億年以上が経った頃、今度は海の中で突然、多細胞化、遺伝子の多様化が急速に進み、大きさも形もさまざまに異なる生き物たちが現れ始めた、それが今からおよそ5億年前のこと。
そのうちに地球を覆うオゾン層ができて、太陽から降り注ぐ紫外線を遮断するシールドができたおかげで、海から陸に上がる生き物たちも現れはじめ、恐竜や哺乳類が誕生し、人類の祖先が誕生したとされるのはおよそ700万年前のこと。
こうしてみると、「私たち人間も海からやってきた」ことをたしかに感じられて、海への愛もますます深まってくるけれど、そんな40億年近い生物進化の歴史を、1年365日に見立てた「地球カレンダー」で見てみると、もっと分かりやすくて面白い。
最初の生命が生まれたときを1月1日の元旦とすると、シアノバクテリアが誕生し、酸素が作られ始めたのは4月頃。
それから海の中で生物が多様化し始めたのが11月、恐竜や哺乳類が生まれたのは12月のはじめ頃。
そこから人類の祖先であるホモサピエンスが生まれたのはなんと大晦日、12月31日のお昼頃!
経済発展と環境問題が大規模に始まったとされる18世紀の産業革命はそんな大晦日もまもなく終わる、23時59分58秒の出来事になるのだそう。
そこから文明がみるみる発展した過去100年の間は、環境破壊と生き物たちの絶滅が猛スピードで、その速さは自然状態の1,000倍~1万倍もの速さで進行しているとされる。
最新の調査結果では、すでに南北アメリカや中南米、カリブ海地域など、野生生物の個体数が90%以上も減ってしまったエリアもあり、淡水域に限ってみても、野生生物個体群が世界平均で80%以上も減少するほどダメージを受けている。
これが過去50年間に進んだ崩壊ぶりだなんて、それも地球の歴史からするとまばたきをするくらいに一瞬の出来事で、いっきに起こってしまったこと。
言い換えれば、悠久の年月を重ねて育まれてきた豊かな自然環境と生物多様性を、こんな一瞬でここまで壊してしまった……その「ことの恐ろしさ」を、改めて感じずにはいられない。
40億年もの生命進化の間には5回の大量絶滅期があったとされるけれど、それでも生き物たちはそのときどきで環境変化に適応し、姿かたちや暮らし方を変えながら進化を続けてきた。
そうして5回目に恐竜が姿を消したときは、小惑星の衝突が原因だったとされるけれど、今の大崩壊は人間の手で、短期間にここまで環境を大きく変えてしまった結果、その極端すぎる変化に適応できずに生物種がどんどん絶滅し、それは現在進行形で進み続けている。
そんな今は、たとえばゲームのジェンガのように、どこかの何かが一つ欠けたらその瞬間から、もう後戻りができない「いっせい崩壊」が始まる危険性もあると、警鐘は年々大きくなるけれど、実のところ生物多様性はまだまだ科学者たちにも解明できていないことが多く、「致命的な落とし穴がどこにあるかも分からない、だからこそ恐ろしい……」と本音を語る専門家たち。
そんな声を聞いてからはますます、生物多様性の崩壊スピードが少しでも早く緩み始めて、そこから回復傾向に転じてくれることを願いながら、私は私にできることを日々積み重ねている。
今を数えきれない生命に支えられて~瀕死の生物多様性を思うとき~

「無為自然」という、地球へのリスペクト|地球の今、海の今を知る Vol.70

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