
地球が誇れる自然の摂理は、決して海や川、山々にだけ働いているわけじゃない。
都会の真ん中でも生態系はたしかに巡り、デザイン次第で自然も暮らしもより豊かに。
そんな都市型アーバンパーマカルチャーも世界に広がり、地球の一隅を照らし続けている。
人が生きているだけで地球が豊かになる暮らし
都会で楽しむスタイルを広めながら、パーマカルチャーの本質に触れられる場所やコミュニティを創り、自然の循環とともに暮らす豊かさを体現しようと、海さんは2016年、千葉県いすみ市に「パーマカルチャーと平和道場」を立ち上げた。築150年以上という茅葺の古民家を自分たちで改造し、2700坪もの広大な敷地にパーマカルチャーのアイデアを散りばめ、どこを見ても生物多様性の豊かさに包まれる。
「ここはいつでも自然の神秘に浸れる環境で、まだ途中経過だけど確実に敷地内の生態系は豊かになっている。自然界も人間社会もパーツではなく全体が支え合って成り立つから、部分ではなく全体性を捉える視点も大切にしているよ。
僕の師の一人、サティシュ・クマールは“Soil, Soul, Society”と説いていて、まずはSoil=大地にしっかりと根ざして暮らし、Soul=自分の心や精神性との繋がりも深めながら、Society=
社会の一員として地産地消やローカル経済に貢献し、行政にも働きかける。
僕自身もここで農的に暮らしながら、いすみ市の地域や東京にも働きかけていて、平和道場でパーマカルチャーの暮らしを体験してくれた人たちも心身が健やかになって、生きる楽しさやパワー、自信を取り戻して新しい人生や活動を始めてくれている。自然も人も、何かが確実に良い方向に動いている実感があるか
ら僕もパワーが漲ってくるんだ」

20年以上、平和活動や環境活動に力を注ぐ海さんは、自分のやり方に限界を感じていたときにパーマカルチャーと出合い、生きること自体を楽しみながら環境再生にも貢献できる姿に強く惹かれたそう。同じように、平和道場を訪れる人たちもここで自然の摂理や豊かさを学び、暮らしを自分らしくデザインする楽しさを体感し、日常や世界の見え方、人生が一転した人は数えきれない。
「地球危機は深刻になるばかりだけど、いくら頑張っても悪化に歯止めがかからない。でも、パーマカルチャーの世界観は必死に頑張らなくても、僕らが生きているだけで、当たり前に暮らしているだけで生態系を再生できる。朝ごはんの野菜や果物の種をちょっと蒔いたらまた恵みが育って、天から降る雨水も有効利用する。現代は排泄するだけでも環境破壊や水の浪費になるけど、コンポストトイレで肥料に変えれば自然の養分になって、人が生きているだけで地球はどんどん豊かになっていく……でもそれって何も特別なことじゃなく、すべての動植物が日々、常に行っていることなんだよね」
パーマカルチャーは自然界で当たり前に起きている現象を体系化し、愛と豊かさのエッセンスを抽出したもの。具体的な原則をパーマカルチャーデザインコース(PDC)などで学んだら、あとは置かれた場所でいくらでも自己流に、お互いを最大限に活かし合う関係性をデザインしていくプロセスもまた美しい。
「パーマカルチャーの基本は、まず生態系や物事をじっくり観察して、眠っている可能性を存分に引き出すこと。平和道場も、太陽の軌道は春夏秋冬でどう変わるか、水がどこから流れてどこへ集まりどこへ流れゆくのか、風の通りや地質などを感じ取ってデザインを工夫してある。頭で理解するだけじゃなく、そうして暮らしに落とし込んでいくと、『自然の循環ってこういうことだよね』って腑に落とせて、暮らしと意識がセットで変わっていけるんだよね」
そんな平和道場の表情も驚くほど多彩で、母屋から美しい森を抜けると多種多様な果樹や野菜、ハーブなど、季節ごとに異なる恵みが一年中実るフォレストガーデンに、また森を抜けると作物が渦巻き状に植えられた曼荼羅ガーデン、手作りの寝室小屋、さらに森を抜けるとフルーツガーデン……と敷地内を案内してもらうこと約2時間!
無作為に見える景色にもパーマカルチャー的に考え尽くされた意匠が凝縮され、その機能性と美しさに惚れ惚れ。海さんがあちこちでつまんでくれるフルーツを頬張るだけでも未体験の甘みに心身がとろけてくる。食べ物は買うものではなく「地球からのギフト」ということも改めて噛み締めながら。
食事は採れたて野菜や地元産のこだわり食材が薪オーブンで調理され、条件によって毎回違う美味しさに出合えたり。大自然の息吹に包まれる中では何が起こるか、どんな野生動物がゲストにやってくるかも未知数で、ただゆったり過ごすだけで自然に驚き笑い感動するセンス・オブ・ワンダーの連続。
現代人はどこか、生きることを複雑に軽薄にしすぎているような、でも本当は生きるって、楽しむって、愛するってもっとずっとシンプルで奥深いことだったよなと、幸せや豊かさの尺度がふわりと原点に立ち戻った気分で。

「パーマカルチャーが目指すのは、デザインを通して地球も自分も豊かになることがゴール。だから、忙しくなったり仕事が増えるようならパーマカルチャーじゃないんだよね。いかに働く時間を減らしてサーフィンタイムを増やすかを考えるのと同じ、パーマカルチャーも空間や時間のデザインを工夫して、いかにハンモック時間を増やしながら本当にやりたいことだけに力を注いで、余裕も増やしながら豊かに暮らすか。
極めるというよりも遊びや冒険のように、自然界に恋をする旅に出かける感覚で、まずは自分が地球に感動する日々を生きながら、さらにはその感動を周りの人たちとも分かち合っていける世界が広がっていくといいなと思っているよ」
【保存版】パーマカルチャーとは何か!?|基本の4原則と共に解説(後編)

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地球にとっては、まばたきをするくらいに「一瞬で起きた崩壊」

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