「自然が好き」と「自然を愛する」は似て非なるもの|地球の今、海の今を知る Vol.66


2022年も気づけばあと数日、ですが正直なところ、私は7年前からグレゴリオ暦とは異なる暦で暮らしていて、個人的には今日という日が2022年12月29日でもなければ、毎年この時期はまったくと言っていいほど年末年始感がなく、ある意味、非国民というか異星人というか……笑。そうはいいつつ、日本の美しいお正月やおせち料理をひととおり楽しみますが、1年の始まりは立春や春分、7月や9月など、使われる暦によって、どの時間軸で生きるかによってまったく異なります。もともとグレゴリオ暦や西暦は欧州のキリスト教文化圏から広がったものですが、自然のリズムとはまったくシンクロしない人為的な暦で、数日後に迎える元旦も、自然界からすればなんでもない1日。それを知ったのはずいぶん後になってからですが、最初は知人に勧められて、天体の巡りに基づく暦で過ごしてみたら断然心地が良くて。その頃から何事も社会通念を「これがすべて」と信じ込むより、違うタイムラインや世界観に触れてみたり、常識や刷り込みを取り払ってみると、余計な囚われから解放されて、思ってもみなかった面白い体験も多くなり、すっかりハマってしまいました。

年末感ゼロとはいいながら2022年を振り返ってみると、今年はVol.62で触れた「プラネタリー・バウンダリー2022」のショックも隠しきれず、「気候危機からすでに気候崩壊が始まっている」「第6の大量絶滅期」といった警鐘が、遠い未来ではなく現在進行形なんだとリアルに感じた1年でした。Vol.49Vol.50でシーフードの問題に触れましたが、海の恵みは今年も不漁続きで、水揚げ高日本一の銚子漁港は2022年、初めてサンマの水揚げがゼロ、サバも前年の1/3にまで減少したそう。2022年10月には、世界気象機関(WMO)の発表で、「大気中の主要な温室効果ガスであるCO2、メタン、一酸化二窒素の世界平均濃度が、いずれも2021年に観測史上最高値を更新した」との報告も(詳しくはこちら)。国際会議を何十年間も重ね、それでも毎回「対策は不十分」という結論ももう聞き飽きてしまったけれど、このままでは世界各国が掲げている温室効果ガス削減目標を達成できたとしても、2100年までに世界の平均気温は+約2.5℃にまで上昇すると予測されています。

日本はといえば、今年も温暖化対策に後ろ向きな国へ贈られる不名誉な賞、「化石賞」を3回連続で受賞し、世の中はまだまだシャローエコロジーがメインストリーム。一方で、今こそディープエコロジーを大切に、「自然と共存」よりも「自然の再生」に貢献を、そして「脱成長」を目指すくらいの大転換をしないと間に合わない、と分析する専門家たちに多くの共感が集まっている空気も感じています。そんななか、改めてシャローエコロジーとディープエコロジーについて考えながらふと、こんな賢人の名言が目に留まりました。

「好き」と「愛する」の違いはなにか?

たとえば「花が好きだ」という場合、ただ花を摘むだろう。

しかし、「花を愛している」ならば、毎日世話をして、水をやるだろう。

花は摘めば枯れてしまうが、

花を思いやり育めば、豊かな命が巡るだろう──。

「自然が好き」と「自然を愛する」はイコールのようでも、想いのベクトルや在り方が違う、その真理がこの言葉には詰まっているように感じました。たしかに、自然を愛するディープエコロジストは、自然から必要以上に奪うことはせず、自然を豊かに育める在り方を選ぶ。思えば2022年もたくさんのディープエコロジストの方々に心を動かされ、HONEY Vol.33では自然写真家や生物学者が紐解く地球の奇跡に深く感動し、HONEY Vol.34ではパーマカルチャーというライフデザインを通して、「人間が生きることで環境や生物多様性を豊かにできる」という希望にも胸が躍りました。これからもディープエコロジーの精神で海と地球を愛する、そんなエッセンスをシェアしていけたらと思いつつ、2023年も皆さんにとって幸多き1年となりますように。それでは、よいお年を&素敵なお正月をお過ごしくださいませ!

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