
すでに絶滅してしまった生き物たち、
──HONEY vol.31「NO Earth, NO Us #05 世界の海から、魚たちが消える日」より
そしてここまで崩れてしまった生物多様性のバランスも、
完全に元通りの姿に戻すことはもう二度と叶えることはできないけれど、
私たちは日常のどこでどんな風にして、生き物たちを絶滅に追いやってきたのだろう?
記事:地球にとっては、まばたきをするくらいに「一瞬で起きた崩壊」で、地球が40億年以上かけて育んできた豊かな自然環境と無限の樹形図のような生物多様性を、一瞬で崩壊させた現代社会について振り返った。どこかで止めようと思えば止められたはずなのに、今は地質学的に「人新世」という新しい時代に突入し、私たちは「人類が自然を破壊してきた痕跡が、地球の表面を覆い尽くした時代」を生きている。
気候変動をはじめ、大量絶滅のような生物多様性の衰退、人工物質の増加、化石燃料の燃焼による堆積物の変化など、人間活動が地質や生態系に甚大なダメージを与え、それもかつて起こった小惑星の衝突や火山の大噴火にも匹敵するような大変化を、地球全体に刻み込んできた時代なのだそう。
たしかに、身近な陸上環境だけでも、便利な生活のための都市化、産業発展のための工業化がハイスピードで進んできた現代。私たちはその恩恵を多大に受け取ってきたけれど、都市や産業、観光地の拡大、農業や畜産のための開拓など、すでに地球の大地は8割近くが人為的に改変されている。
それに比例して野生生物たちはどんどんと行き場を失い、絶滅寸前になるまで乱獲や密猟も繰り返されてきた。行き過ぎた物質文明と自然破壊、さらには毎日たくさんの有害物質や廃棄物を捨てながら自然を汚し、浪費される電力にしても遠くの海や森を壊し、地下に眠る化石燃料を掘り起こして作られている。
石炭、石油、天然ガスといった化石燃料も立派な自然の一部で、それらは何億年も昔にいた植物や海のプランクトンなどが化石となったものだけれど、産業革命以降はそれをどんどん燃やしてエネルギーを作る代わりに、膨大量の温室効果ガスを排出し続けて、今では「気候崩壊」という惑星レベルの危機に直面している。

それでも、愛する海は地球をなんとかして守ろうと、大気の熱を9割近くも吸収してくれているけれど、気温上昇は止まることなく右肩上がり。
海の中では過剰に吸収した熱やCO2によって水温上昇や海洋酸性化が進み、大量消費を支えるための乱獲も加速して生き物たちは姿を消し、水質汚濁が海洋生態系を狂わせて、プラスチック汚染も海洋食物網のすべてに蔓延してしまっている。
今は「毎分トラック1台分」という恐ろしい量のプラスチックごみが海に流出しているというのに、今後もまだまだ増えていくという予測。
けれども、人間自身も生態系の一員だから、動物たちがこれほどの痛みを負っている状況で人間だけが安全でいられるわけもなく、私たちも毎週クレジットカード1枚分以上のプラスチックを食べているといわれ、人間の血液中からもプラスチックが検出される時代になってしまった。
「助けを求めている自然の声に耳を貸すことは
──ミヒャエル・エンデ『魔法のカクテル』より
人間自身のためにもなるのに、
それでも人間は知らんぷりだった。
人間は多くの動物たちの血のような涙を見ながら、
それでもこれまでと同じことを続けていた」
この言葉が象徴するように、自然環境や動植物は何十年も前からSOSを出していたのに、破壊を止めないどころかさらに加速させて、「いくらなんでも、やりすぎでしょ……」と感じながらときどきふと、何世代も先の人たちが今の時代を遡って歴史を書くとしたら、どんな風に表現されるのだろうと思ってみたり。
それこそ、「この時代の人たちは目先の私利私欲ばかり優先して、地球をこんなにも破壊し尽くした」とか、「人新世の地層はゴミやプラスチック、自然を壊す有害物質まみれ」とか、悲しいほどに残念な書かれ方をするのかもしれない。
反対に、私たちが今ここで、未来を守るための大転換を叶えられたとしたら、それが歴史的なパラダイムシフトとして語り継がれていくのかもしれない。
個人的には、できれば後者で在りたいなと願いながら……。
もちろん世界はこれまでにも、1992年の「地球サミット」で発表された「リオ宣言」、2000年の「MDGs(ミレニアム開発目標)」等々、環境保全の目標がいくつも掲げられてはきたけれど、結果的には達成できずに先延ばしの繰り返し。
2015年から広がったSDGsも、グリーンウォッシュのような見せかけエコが多い世の中で、いつまでたっても「対策は不十分」のまま、地球の臨界点を超えるとされるタイムリミットだけが、虚しく近づいてくるばかり。
そんななかでも近年は、そもそもこれまでの資本主義、生産・消費・廃棄を繰り返す文化、そうした古い体制や社会構造を根本から変えない限りは解決しない、という思想がどんどんと広まってきている。
そうして、環境問題の源流から見直す人が増え、「モノが豊かになるほど自然も心も豊かさを失う、これってほんとうにシアワセなの?」「こんな破壊的な時代はもう、やめていこうよ」という声が多数派になっていけたなら、今の世代から未来の子供たちへ、破壊の痕跡だけではないプラスの何かを残していけるのかもしれない。
地球にとっては、まばたきをするくらいに「一瞬で起きた崩壊」

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